危険はただ顕在化しただけ

 高木氏をはじめとする人々が、Winnyによる個人情報暴露の危機について記している。
 比較的わかりやすく書いてある記事としては以下のものがあった。

 これらの中で散々言われている事は、「Winnyにはファイルを保持する実体が存在しない為、ネット上からの削除を依頼できない」ということだ。
 確かにWinnyで拡散したファイルを全て削除する事は不可能に等しいが、たとえWinnyで無くともネット上に露出してしまった情報の削除は困難だという事に変わりは無い。
 その情報が閲覧され拡散すると言うことは、その情報に何らかの価値が認められているという事だ。それはWinnyの場合、キャッシュの拡散と言う事で具体的に見て取る事ができる。
 では、Winnyが無ければ情報の拡散は阻止できるのか? そんな事は無い。掲示板に書き込まれた情報を削除したとしても、その情報を閲覧した人間がそれを保存(キャッシュ)し、別の場所で公開(アップロード)すれば状況は全く変わらないのだ。


 実際、イラク人質事件の際に某新聞社が公開した被害者の住所は、すぐさま2chに転載された。もちろん削除人が素早く削除したわけだが、後に立ったイタズラ行為の増加に関するスレッドで再び転載された。
 最初に転載されたスレッドのログを保持している人物が、それを再び書き込めば最初の削除は事実上意味をなさなくなるわけだ。もちろん、最初のスレッドの閲覧者に加えて後のスレッドの閲覧者が加わった事でキャッシュも拡散しているわけである。


 インターネットの普及によって、情報の入手に対して時間と場所の制約が取り払われた。データ化された情報のコピーは容易だ。そしてファイルのアップローダ掲示板も至る所に存在する。これらを使えば、Winnyがやっている程度の情報拡散と同じ事が実現できるだろう。
 もちろん実際にやろうとすれば面倒だし、どうやってクライアントにキャッシュしてもらうかという問題は存在する。しかし個人情報の暴露は、Winnyだけができる特殊な事ではないのだ。
 個人情報が暴露される危険性……それは、Winnyだけではなくインターネット全体にあった危険性なのだ。


 そういうわけで、そろそろWinnyだけを名指しで糾弾されるのはやめてくれないかな? 容疑者としては目立つが、彼だけがなし得る行為というわけでもないんだからね。


 極端な話、特定の情報を保持したままネット上を移動するワームなんてものも考えられる。P2Pファイル共有型ワームとかも。一般ユーザのウィルス対策はたかがしれているそうなので、上手く作れば誰も知らないうちに特定のファイルを配布して回る事も不可能ではないだろう。
 いつの間にか見知らぬファイルがMyDocumentsにあった……なんて事が、そのうち起こるかもしれない。実際、メールにファイルを添付してばらまくウィルスは既に存在するわけだしね。