緊張関係にある国家間での大使館襲撃対応の実例

 試しに探してみたら、ちょっと前に実例があったので引用してみる。
 ちなみに、タイとカンボジアの両国は2003/04/14までに双方の大使が帰還しており、国交は正常化しているとともに責任者の処罰と被害補償は順次行っているそうだ。

 カンボジアの首都プノンペンで29日夜、タイのトップ女優の発言に怒った市民数百人がタイ大使館を取り囲み、一部が館内に侵入して建物に火を付けるなど暴徒化した。武装警察官が事態の沈静にあたったが、大使館の窓ガラスを割ったり、大使館前でタイ国旗を燃やすなど、一時は騒然となった。現地からの情報によると市民らはタイの女優スワナン・コンジンさん(24)が「(カンボジアにある)アンコールワットはもともとタイのものだった」と述べたとされることに怒り、過激な行動に出た模様だ。

 タイの有名女優がカンボジアを侮辱する発言をしたとして、抗議していたカンボジア市民が29日夕、プノンペンのタイ大使館に侵入、書類などに火を付ける騒ぎとなった。大使館はほぼ全焼したが、タイ外務省によると、大使館員は避難済みで無事という。タイのタクシン首相は同日夜、「館員救出のため、治安部隊を派遣する」と述べ、今後、両国関係が悪化するのは必至だ。

 状況はそっくりですね。暴徒化した市民が大使館の窓ガラスを割ったり国旗を燃やしたりしていますが、人数及び警察の対応という点で中国のほうが状況は悪い。ただし、侵入したり放火で全焼まではいっていない点は大きく異なる。

 タイの有名女優スワナン・コンジンさんの「侮辱発言」に端を発した、プノンペン市内の暴動は30日、沈静化したが、タイ系ホテルでカンボジア人従業員1人が死亡、タイ人7人が負傷したことが判明した。両国の外交関係が代理大使級に格下げされるとともにタイ側はカンボジアへの技術、経済支援の停止を発表した。カンボジアのフン・セン首相は同日、遺憾声明を出すなど事態収拾にあたったが暴動は両国関係に大きな傷跡を残した。

 良くないことに、このケースでは死者まで出しています。ここではカンボジア人となっていますが、後にタイ人従業員の死亡も確認されています。とりあえず暴動で負傷者が出るという事自体、外交関係の大幅な転換に至る暴挙だという事がお分かりいただけるかと思います。

 タイ外務省報道官は30日、カンボジアのタイ大使館が放火されるなどした騒乱事件で記者会見し、タイの駐カンボジア大使を召還するとともに、両国の経済協力を中止すると発表した。

 報道官が発表した抗議文書は、カンボジア政府が自国駐在の外交官や外国公館の保護を義務づけた国際法の順守を怠ったとして、「最も強い言葉による抗議」を表明。タイ大使からカンボジア政府の「最も高いレベル」への度重なる保護要請にもかかわらず、暴動が繰り返されたと、強い不快感を示した。

 そのうえで、文書は駐カンボジアのタイ大使と全大使館員の召還を表明し、駐タイのカンボジア大使と大使館員の退去を求めた。また、外交関係の臨時代理大使級への引き下げ、現在進められている両国の技術・経済協力に関するすべてのプロジェクトの中止を表明した。

 これらの措置は、カンボジア側が事件について完全な説明を行い、タイが被った損害に対する賠償や責任者の処罰がなされるまで続けられるとしている。

 大使の召還は、外交において最も強い抗議となります。通常は大使を通して国家間の交渉が行われるため、大使を引き上げることは相手国内においての交渉の拒否を意味します。要するに……直接詫びを入れに来るまで、お前の意見など聞かないという強い意思表示です。
 ここにもしっかり書いてありますが、国際法では自国駐在の外交官や外国公館の保護を義務づけております。たとえ放火で全焼していなくても、取り囲まれて投石が行われるような事態になったことで国際法の順守を怠ったと言われても反論はできません。
 ちなみに、お隣の国である韓国政府はよく駐日大使を召還なさっています。だいたいすぐに戻してくるので、結局何が言いたいのかは良くわかりませんが。(w

 結論としては、大使の召還は最も強い抗議の意思なので軽々しく実施すべきではないが、ある程度の緊張関係にある一般的な国家の場合、大使館が襲撃されてかつ現地の自国民に死傷の危険が及んだ状況では流石に行わざるを得ない……となります。
 そこいら辺も踏まえた上で、日本政府には慎重かつ大胆で国際世論が納得してくれるような抜群の対応を取ってほしいところです。(無理か?)(w;

 以上、過去記事はHome★阿修羅♪経由で引用。