警察の反乱

 宮城県警捜査報償費の執行停止問題で、漆間巌警察庁長官は30日の会見で「捜査協力者に知事が会う目的で文書の開示を求めるのは警察活動への介入そのもの。言語道断だと思う」と述べ浅野史郎同県知事の姿勢を批判した。「知事の考え方、行動に疑念を持っている」とし、「警察活動は政治的中立性が担保されていることを知っているのか。協力者の秘匿は警察活動において絶対的に必要」と指摘した。

 この日の会見で、漆間長官は「知事は、今の警察制度が、政治的中立性を担保することで成立しているのをご存じなのか。知事は公安委員会を所轄しているが、警察の運営に介入できない仕組みになっている」と指摘した上で、「協力者に関する文書を見せろと言っているが、これはまさに警察活動全体への介入そのもの」と痛烈に批判した。

 また、「協力者の保護は捜査の大原則で絶対、譲ることは出来ない」とする一方、会計文書の黒塗りについては、「(知事や県の監査委員が)直接、会わないということであれば、(黒塗りは)必要ない」などと妥協の余地があることも示唆した。

 県警は警察庁と協力関係にあるが、制度上は知事を頂点とする県の機関だ。アメリカ軍の最高司令官が合衆国大統領であり、自衛隊の最高指揮権限が総理大臣にあるのと同じく、都道府県警察本部の最高指揮権限は各都道府県知事に帰する。
 大小を問わず武力を有する機関は基本的にシビリアンコントロールの下にあり、県知事は県警察本部に対して必要な情報を要求する権限があると解釈できる。これに反抗する事は一種の反乱であり、それに対して県知事が予算の執行を停止する等の対応を行うのは正当な行政行為であると言える。
 警察庁は国の機関ではあるが、その役目は各都道府県警察本部間の調整業務であり国家警察ではない。つまり警察庁長官が県知事に対して介入を試みることは、非権限者の行政への介入であると解する事が出来る。少なくとも、会見で上記の発言をするというのは常軌を逸した行動だと言えるだろう。

 つーかさ、首相が自衛隊の機密情報にアクセスできるように、知事は県警の捜査情報に(正当な理由があれば)アクセスできるべきだと思うよ。選挙で正当に選ばれた代表者には、しかるべき権限を与える……それが民主主義なんだから。
 もちろん知りえた情報を漏らすのは違反だし、その旨は現行の法規にも記されているはず。政治的中立性ってのは警察自体に適用されるものであり、正当な理由を持った監査行為でもある知事の行動に対して疑念を持つ警察庁と県警こそ、疑念をもたれるべきではないのかな?
 これ、軍隊がやったらエライ問題になるはずなんだけど、警察側は自分たちが強権を持った武装集団であるという認識が不足してるよなー。まともに運営されているならともかく、金銭管理にかなり疑惑がある状態でソレはないだろう?